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 ――わああぁ、なぜ黙っているこいつは。まさかバレたのか、バレてしまったのか。それはだめだ、それはまずい、なぜならこいつは嗜虐性の持ち主であり、この想いが露見した日には精神的な下克上を狙ってくるのは確実、関係の主導権を握られ、いいようにあれやこれやと弄ばれてしまうに違いない、悪代官と町娘のようにくるくると。
 それだけは絶対に避けなければ。


 ああ、惚れた方が負け。──とはよくいったものだがしかし私は負けぬ。さぐりを入れ、大人の駆け引き(憧れ)の末、さんざん気を持たせ、焦らして、最終的には向こうから好きだといわせてやるのだ。
その日までは、しっかりせねば。
「隊長はいねえんスか、好きな男」
 どきん。好きな。男。
 あらためていわれるとどきどきする。


「い……」
「へ?」
「い、る」
「へえ……」
 貴様だと。いえないいわない、いいたいのに告げたいのに。できない。ああもう心臓の音がうるさい。