* *

 わ、笑って……? な、なぜだどういうことだ、まさか本当にバレたのか? これほどまでに私が平静を装っているというのに。
 ──ん?
「大前田」
「なんスか」
「貴様が先ほどから何度も傾けている猪口だが、とうに空だぞ。そもそも、もとより酒は注いでいなかった」
「……ちっと酔いがまわってきただけッス。ええ、ぼーっとなんてしてませんよ考え事なんてしてません」
「酒には強いだろう? 今宵はまださほど呑んでおるまい」
「よく見てんスね」
 ――あ、当たり前だ。いつだって。
 目で追っていた。
 自分でも、無意識のうちに。
「で?」
 どんな男なんスか。
「……そッ、それは」

(※大前田のことを話し。本人に気づかれず)