濁流ガ如き心中未遂


最近エフにルネッサンス吉田さんが描いておられることを遅まきながら知ってあわてて買ってみたら普通に通常運転でした。安心したような心配なような。


風俗嬢とゲイの客の話が好きです。



マンガ・エロティクス・エフ vol.80

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茜新地花屋散華 (EDGE COMIX)

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淋座敷空慰 (EDGE COMIX)

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甘えんじゃねえよ (EDGE COMIX)

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拍手押してくださった方、本当にありがとうございます…!早くまとまったものをUpできるようにがんばるよ…!
以下、書きかけ。砕蜂毒娘設定。(※R-18、流血描写・エログロ要素有り)



 
 最初は揺りかごの下に猛毒を
 次は布団の下 そして衣服の中に
 さらに乳に混ぜ赤子に与える

 (毒姫/三原ミツカズより引用)


 幼少のころから毎日少しずつ少しずつ毒を飲むのだという。
 そのうち耐性ができて外部からの毒は効かない身体になるのだという。
 そのうえ身体がまるごと毒の壷になるから、たとえば血液や体液が他人の体内に入っただけで相手を毒死させることも可能だと――そういう。
 古来より暗殺用の寵姫として作り上げられてきた全身猛毒の『毒姫』。
 その闇の系譜につらなる少女達が、いまだ存在していることを、多くの者は知らない。



 春の夜だった。
 薄墨をはらったような雲がぬるい風で流れれば、上弦の月が姿を現す。夜空に細く描かれた弧はまるで嗤っているようだ。
 これからお前のすることはお見通しだと。
「下らぬ」
 結い上げた黒髪に差した簪に触れる。まるで遊女のように着飾った自分の姿に昂揚していることに気づいた。
 笑んだまま思わずふっと息を漏らし、すぐに口もとを引き締める。
 ――これは装束だ。
 刑戦装束と同じ、戦いの衣だ。



 決して正体を悟られぬよう、そして男達の目を惹きつけるようにあつらえられた着物や装飾具を用意したのはあの男だった。着付けを手伝い、頬に白粉をはたき血のように赤い紅を差したのも。
 刑軍の部下にやらせきゃいいでしょうと毎度毎度ぼやくが、砕蜂はあの男以外に身支度を手伝わせることがない。他の者に触れさせることは、ない。
 頭上の月に向かって眼を細め挑発的に赤い唇の端を上げた。
「そこで見ているがよい」




「あーあーあー、こりゃあまた派手に殺ったもんスねぇ」
 返り血をぬぐい、息をつく。襦袢を肩掛けにしたとき、聞き慣れた濁声とともに襖が両側に開いた。
 縦も横も砕蜂の倍ほどある巨躯はのっそりと室内に足を踏み入れる。すぐに濃い眉をしかめて口もとを覆った。耐え切れなかったらしく、何度かむせた。



 肩を揺らしながら、うらみがましくこちらをにらむ。
「ひっでえ臭い……っつか、毎回のこととはいえ隊長なんで平気なんスか。ああ、俺の新品の足袋が台無しじゃねェか。特注なんスよこれ」
「いい加減、貴様も慣れろ」
「んな無茶な。大体この人数じゃ無理がありますって」
 頭を掻いた。ため息をつきながら周囲を見渡す。



 血まみれの九人が倒れている。
 誰ひとりとして息をしている者はいない。
 料亭の一室を貸し切り行われた酒宴は、供宴となって終わった。砕蜂を抱いた男たちは死に至るまで時間を調節した毒で、ほぼ同時に、苦しみながら死んでいった。
「何がすげえってこんだけ大胆にいかにも暗殺しかありえねぇって状況で殺されてもおかしくねえ身に覚えのある奴らがいちどきに始末されてるってんのに、事件にはなんねェ――ってことッスよ」
「斬り傷など、どこにもないだろう。これは偶然に起きた『事故』だ。何しろ命じたのは――」
「他でもねえ『中央』ッスからね」
「四十六室と呼べ」
 貴様のは蔑称だ。



「そんで真相は闇の中、ってか。に、したって」
 再びため息をついて腰を折る。
「こっちのやつなんてゲロ吐いてっじゃねえスか。死に際に格好悪ィなぁ。女抱いて絶頂のなかで死んだってのにこの苦悶の表情ってのが……こんな死に方だけは、俺ァ絶対に嫌ッスね」
 ただの腹上死の方が百倍マシだとぶつぶつとつぶやいた。
「死に方など選べぬ者がほとんどだ。それに、死顔は自分では見えぬのだから構わぬだろう」
「そりゃあ、まあ……でもそれはやっぱし殺る側だからいえることッスよ」
「ふん」
「しっかし、こいつら全員とやった隊長が一番元気ってのもすげえ話だよな」
「余計なことを」
 いうな、ととがめるのをさえぎって、



「隊長」
 深々と頭を下げる。
「お疲れさんでした。離れに部屋とってるんですぐ休みます? そっちに風呂あるんで使ってください」
「大前田」
「なんスか? 何か、足りねェもんでも──」



「火照りがおさまらぬ。なんとかしろ」
 抱きついて肌をこすりつけると、大きな手がやさしく頭を撫で、幼子にするようによしよしとあやされた。
「やってる最中に、ついでにいっとけばよかったじゃねェか」
「任務中だ。気が張っているのだ、そのような余裕などあるか。それに貴様ら男のように一度出せば終わりというわけではない」
「へえへえ。女の方がすけべッスよね、そういうの聞くと。あ、それとも隊長が特別なんスか。このすけべ娘」
 襦袢をめくり、尻を軽く打った。
「うるさい」



「──あ……ッ」
「……ここじゃ、さすがに気が退けるんスけど」
「貴様のような図太い男にもそのような繊細な神経があったか」
「こう見えて意外と俺は繊細なんスよ。隊長の方が図太いと思いますけどね」



「俺もまだ死にたかねえッスから」
 道具を使用するという意味だ。そうでなかったことなどないのだけれど。真珠の首飾りのような玉が連なったそれを、容赦なく後方の蕾に詰め込んでいく。
「前にはコレで。ちゃんと両方用意してますよ」
 張り型はグロテスクな新しいものに替わっていた。一気に突かれ奥まで押しこまれて、悲鳴とともに快感が疼く身体の芯をつらぬいた。



「……ひぁ……あ、あ」
「そんなにいいんスか」
「あッ……、あ、んんっ……! い、いッ……!」



「ここ」
 砕蜂の下唇に避妊具を被せた指先で触れた。直に触れればどうなるか、この男は知っている。
「毒、仕込んでんスか」
「よせ……今回――は、口内に、も塗りつけてある」
「せっかくひさしぶりに隊長のお口でしてもらえるかと思ったってのに、ついてねェな」
「手で……しごい、て」
「いいッスよ。隊長のやらしい格好オカズにしながら自分で出すんで」
「間抜け、な……」
「よけいなお世話だっての、誰のせいだと思ってんだよまったく。あ、最後ぶっかけていいッスよね? 顔にいいスか? どうせすぐ風呂入るし」
「勝手に……、しろ」



「私と――、このような、ことをして……、生きて、いる、のは、貴様……だけ、だ」
「そりゃそうでしょうよ」
複雑そうな顔がかすむ。もう限界が近い、体力も性欲も毒も。
 ──解毒を。今回の配合はまずかった、人数の多さにばかり気をとられて自身に無理を強いた。
 ああでも今は。
 何度目かの絶頂のあと、気を失うように眠りについた。