i言葉。
「好きだから、殺すらしいんスよ」
細い片眉をほんの少しだけ上げて、それからいぶかしげに切れ長の瞳をすがめた上司にもう一度同じことをいう。
「好きだから」
つながるようでつながらない言葉。
「殺す」
混ざり合うようで剥離していく気持ち。
「──んだそうッスよ」
下らぬ、とかなんとか。つぶやいたような気がする。
お貴族様の身辺警護なんざ本来なら警邏隊の任務じゃねェってのに、箔がつくだとかやはりここは上の者がだとか並べた理屈はどれも筋が通っているようで実はそうでもない。
いっときは好き合ったがきれいさっぱり別れたはずのおんなが逆上して自分の命を奪いにくるってなぁ、多少いやかなりの割合で被害妄想入ってんじゃねえですか。
逆恨みだとわめき嘆きそれからさめざめと自分かわいさに涙を流す男を正面にして、一体ぜんたい俺に何をいえと、そんでもってまたどうしろと。
ため息つかねえようにこらえンのが精一杯でした、と、これは隊長に報告すべきか否か。愚痴をいおうものならよくて『下らぬ』悪くて無視なのでやめとくか。そもそも俺の仕事だしな。
──ああ、ええと。
要は小指切って契り交わし僕が家族を説得するよなんとかするから待っていてくれ、きっとだよ。必ず、一緒になろう。
言質取れてんスけど完璧に。
優秀なんスけど、うちの部下は。
んで、さほど優秀じゃねェ俺がなぜにここで大の男の恨み辛み(たまに思い出し惚気)を延々と聞かされなくてはいけないのか。
どうでもいいってか面倒臭えよ、大変にこの状況も感情も、もうなんもかも。
「つーかこんなの」
振った女と振られた男がする会話じゃねえッスよ。
とか。
云ってみたい。
云わねェけど。
云えねェけれど。
一回upしたかもですがすごい書きたい・振られた男と振った女の子のそれでも表面は普段通りでそれでも胸のうちをくすぶらせ続けるもの。砕蜂はなんで副官が自分のことそんなにまで好きなのかわからないといい、恋というものが理解できなくて内心困惑混乱しながらも平静を装って副隊長に接していればいい。