平子さんと砕蜂ちゃん。


拍手、メールなど本当にありがとうございます…!うれしいです、すごくうれしいです。いただいてばかりで愛をお返しできないふがいなさをどうか許してください…!お返事、ちょっとずつですが返させていただきます。


あのねあの、うれしすぎる感想や目からうろこな解釈をいただくと、舞い上がりすぎてちょ、落ち着け自分!クールダウン!いまのテンションのままだと愛が剛速球すぎて受け取り拒否されるから重すぎる愛は、だめ・絶対(二次元除く)。と思ってお返事遅れる悪循環スパイラルを今年こそ断ち切る所存だよ…!



★五番隊長の復帰記念にこんな話を考えた。


「……しゃーけど、なんで呼べへんの?」 


 冬だというのに日差しはあたたかい。
 こうして外套もなしで外にいてもぽかぽかと心地よかった。
 贅を尽くして造られた二番隊詰所のもはや庭園だとか花園だとかいってもよいような広々とした庭の一角、少し奥まった場所にある桜の木の下に、ふたりはいた。
 よく手入れをされている樹だ。春になれば大層綺麗に咲き誇るだろう。
 

「ジブンとこの副隊長の名前なんて、普通に下の名前呼び捨てでええやん」
 猫背でのんびりと問うた平子真子五番隊隊長に、かたわらにどんよりとした空気をまとって体育座りをしていた砕蜂はふっと視線をななめ下に流した。
「──……さすが、『あの』藍染惣右介すらそうしていた御仁は、おっしゃることが違うな」
「いうな、ちゅうか、うん、それはいうな……」
「すまない」
「……わかった」
「なんだ?」
「練習に付きおうたる」



「ちょっと俺ンこと呼んでみ」
「──平子殿」
「ちゃう。そうやなくて。下の名前や」
「……」
「ん? どないしたん?」
「大前田。大前田はどこにいる」
「……あんな、ほんまはな、二番隊の隊長さんにこないなこと聞きたないんやけど……」
「いや、これは……」
「目ェそらすな。ほら、こっち見ぃ。バレとるから。怒らへんし。覚えてへんのやな?」
 あらためて名乗り、うながした。



「シンジ、殿」
「殿はいらん」
「──真子」
「なんやふっつーに呼べるやんけ」
 ということはやはり。相手か。
「ま、慣れや慣れ。何事も」



「し……しんじっ」
「もっと! もっとや! もっと感情込めて!」
「真子──ッ!」
「ええで、よくなってきた! んじゃ次、離ればなれになるときのや!」
「真子、行くな……しん、じ……っ!」
「よっしゃ、そんでなんやわからんけどなんやかんやで奇跡がおこって帰ってきたときの!」
「なんやかんやで帰って来たのだな! よかった、真子……ッ!」



「よし、次は、実は生き別れになった兄だと判明したときのや!」
「なん……だと……? なぜ……なぜだ、お前が……真、子……。そんな、兄……だと……?」
「んでもって、なんやかんやあって生涯の敵だと知ってもうたときの!」
「貴様と、戦え……というのか──き、さまは……ッ、どこまで私を苦しめれば気が済むのだ! 答えろ! 真子!」
「ラストスパートや! そんなオレがなんやかんやで砕蜂ちゃん庇うて真の敵を倒したはええけど瀕死状態!」
「い、嫌だ……そのような、なんやかんやで私を置いていくな! もう──もう、独りにはしないでくれ……、目を開けろ……頼む、真子……」
「うん、なんやかんやで生き返った!」
「き、貴様 ば……っ、泣いてなどいない! 泣くものか! 莫迦者……しん……じ……。よか……っ……」
「あともうひとデレや!」
「なんやかんやあったが貴様のことなどなんとも思ってはいない! ……っ、き、さまが……真子──貴様が、私の兄だということが……半分、うれしくて……半分、つらいのだ……」
「よし、ええデレありがとさん! 実は砕蜂ちゃんにいろんなもんと引き替えにオレの力渡してもうて、真の黒幕と戦うことになったとき!」
「……そこで見ていろ。もう二度と、貴様をあのような目に遭わせはせぬ。この力──貴様からなんやかんやで譲り受けた力で、必ずや我らの宿敵を倒してみせよう。私を信じろ! 真子!」




「……あれはなんていう遊びなんだろうね、ラブ」
「俺が知るかよ。何やってんだか、シンジのやつ……」
「仲がよいのはいいことやあ、例えアホが増えてもな」
砕蜂隊長、すげーノリノリですね」


 隊長ふたりして趣旨を置き忘れていたことに気づいたころには、なんやかんやで世界を救っていました。




「──と、まぁそういう訳なんやけど」
 ことりと茶を置く。
「ホンマおもろいわ、自分ンとこの隊長さん。『あの』四楓院のおひいさんが格別に可愛がってる、いうて百年前から少しは名の通った子ぉやったけどなァ」


「俺は普通に呼んでますよ。砕蜂隊長って」
「呼び捨てにはせえへんの?」
「できるわけねえでしょう」
うちんとこの隊風見て物をいってください、遠慮のない言葉にも平子はにッと笑っただけだった。
 背中を長椅子に投げ出す。
「『砕蜂』ちゅうのは──」
 行儀悪く天井を仰ぎながら、かり、と落雁を噛んだ。
「号なんやってな。むかぁし、聞いたことあるわ。喜助にやったか」
 ──あいつ、元・隠密機動やから。


「思い出しちまうらしいんスよ」
「ん?」
「隊長のこと、梢綾って呼んでたのは、亡くなった両親と兄さんたちだけらしいんで」
「……ふうん?」
「昔のこと、必要もねえのに思い出させることねえでしょう」


 それはきっと。
 あの、おそらく前しか見ていない少女の歩みを止めてしまうことだから。


「訂正するわ」
 頭をかたむける。
 逆さまになった視界に副隊長の姿をおさめた。
「ホンマおもろいな、自分ら」