おうちにかえろ。


砕蜂たんの見事な食いっぷりに、落ち込む大前田家の料理人(通称・板さん)。


「だめだ、今の俺じゃあだめだ」

「別にいいじゃねェか、お前の料理、繊細っつーか見た目もいいし薄味でもうめえし、魚捌かせた日にゃあ、天下一品、ありゃあ芸術だろうよ。だから父上も母上もよろこんで客が来たら目の前で捌かせて、活け作りに刺身に寿司握らせて──ってやってんだし。一回あれやったなぁ、でかい魚──鮪か。でん、と横になったあれを手早く捌いてくお前に俺が女だったら惚れてるところだぜ?」

「……坊ちゃん」
「ん? っつーか俺様の話聞いてたかおい」
「現世には『満漢全席』という料理がありやす」
「なんだそりゃうまそうだな。名前だけで」
「あの女人──砕蜂さんにはそれしかねえと、あっしは昨日一晩、寝ずに考えて決めやした」
「寝ろよ」


てなやりとりのあと。


「すいやせん旦那様、奥様。しばらく修行の旅に出てきやす」
「──っつって本当に旅に出ちまったんスよあいつ」


……貴様の実家は使用人まであほというかなんというかあれなのか……と思いつつも、
「そいつがようやく帰ってきたんで今日飯食いに来てくださいよ、今度こそ満足させてやるって息巻いてんスから」

「……うむ」



 砕蜂急に仕事立て続けでふらふら。
(そういえば昼食も摂っていない……腹が減ったことすら気づかぬほど、私は忙しかったのか)
で、夜、ようやく大前田家へ。


で、ついつい安心して、ああもう大丈夫ここへ帰ってくれば大丈夫なのだって思った瞬間、


「ただいま」


ってすごいナチュラルにいってしまって、みんな、え?あ、はっ……となったあときゅんってなってぎゅうううっうわ、あああもう可愛い−!!
そうよそうですここがあなたのおうちよ!いつでも帰ってきていいんだぞ。遠慮なんていりませんわ砕蜂隊長、そうですよお義姉さん。
砕蜂わたわた。のち、胸があったかくなってどうしようもなくなって、
ご飯めちゃくちゃ食べました。


板さんがもう一回修行の旅に出る出ないで揉めたのは隊長にはないしょです。板さんは身なりも心も純・和風なんですがイタリア人なんですよ。だからいたさん。超・勝手に決めてみた…!



借りぐらしのハニー。たむろうさんから半年以上前にいただいたネタ。
うう今さらーでも書きたかったんだもの。