たまには別ジャンルなど第二弾。
★はがれん・(ハボロイ←リザ?)
■彼女の気丈と僕の事情。
どうにも――本当に強いひとなのだと気付くのに、さほど時間はかからなかった。
彼女の視線のさきには、大抵「あの人」がいた。「あの人」――我が愛しの上司、焔の錬金術師ことロイ・マスタング大佐。
その強い意志も至上の目的も、格好良いのにどこか抜けててかっこ悪いところも、なんとも憎めないところも、仕事っぷりも、本当に尊敬できるところも。なんというか、全てが。この人が好きだなぁ――と思える貴重な上司。おれはこの人の下で働けて嬉しいし、彼の役に立ちたいと思う。というか、個人的にも、誘われればベットの相手をつとめてもいいと思っているくらいには、しみじみ――ただ単純に――大佐のことが一人の人間として、好きなのだ。
別にこんな気持ちをおかしいとは思わない。
おれは女性が好きだけれど男と寝たことがないわけじゃないし、ベットの中での行為にそれほど重大な意味があるとは考えていない。それはそれ――まあ、それそのもの、だ。以上でも以下でもなく、ベットの外まで引きずるもんじゃない。割り切って楽しむもよし、恋人同士ならば二人の関係を育むスキンシップにするもよし。ケースバイケース。人それぞれ。ただし、相手に対する思いやりは必要だ。
そういう意味で、おれは大佐と寝てもいいと思っている。もちろん、向こうが求めてきた場合に限って、だが。抱くにしても、抱かれるにしても。無理矢理はよくない。無理強いはしちゃだめだろう。
──ああ、お忙しい大佐、出世争いに引っ張られる足、山積みの問題、課題、そして書類。デートもままならない。溜まるものもあるだろう。身近で解消できるならそうしたらいいのだ。安くない金を払って娼館に行くよりも。
そのとき、おれが一番最適な相手だと考えるだけだ。後腐れなし。テク有り。よけいなこといわない。無駄なことしない。彼女みたいに秘めた想いもない。
ねえ、どうよ、大佐? ――てなことを、積極的に売り込んだわけではないのだけど、大佐と「そういうこと」になったのはつい先日のことだった。
お疲れの大佐。今日も残業、ソファで仮眠中。帰れないのは、おれも同じなんだけどさ。
一時間したら起こせ……そう命令して、大佐はばったりとソファに倒れこむなり、死んだように眠り続けている。仰向けなので寝顔がよく見える。眉根をよせて、口は半開き。よだれ、たれてます。デートの相手には見せられない姿です。いびきはかいてないけど、寝息が苦しそうなのは、制服のままだからかもしれない。
おれは大佐を起こさないようにそうっと、制服の襟元をゆるめた。
一時間を少し過ぎたあたり。はあ――とため息をついて、時計を見て時間を確認、おれは彼を起こしにかかる。
「大佐ー、起きてくださーい。時間ですよー」
肩に手をかけて、ゆさぶる。うにー、とかうがぁ、とか、うるせーとかむにゃむにゃいってるけれど起きない。
耳元で、
「大佐ー? おーい。もっしもーし」
全然起きないし。それどころか。
「……だまれ……もやすぞ……」
そうつぶやくと、寝返りをうって向こうを向いてしまった。
ひどすぎる。おれが一体何をしたというんだ。ちょっとムッとしたので、大佐の耳元に顔をよせて。襟足の髪を払い。口の中に唾液をためて、ゆっくりと、
――ぱく。あむあむ。ぺろ。
「――――……っ!?」
すると、がばあっと、ものすごい勢いで身体を起こした。
「あ、なッ……」
「はい?」
にこにこなおれ。してやったり、な満足感。
「あ――あ、あ、し、少尉ッ! ハボック少尉ッ! き、君はッ、一体、何をしてるんだッ!」
真っ赤になって。あわてて。舐められた耳をおさえて。大人げないなぁ、この人ってば。
かわいいよ、全く。苦笑してしまう。
「何を――っつうかですね、まあ、大佐を起こそうと」
「ふ、普通に起こせばいいだろう!」
「起きなかったじゃないですか」
「う……」
「にしても大佐の耳たぶって、柔らかいですねえ」
「――バカ者――ッ!」
枕を投げられた。
子供かこのひとは。本当にもうすぐ三十路なのか、疑問に思えてくる。
「枕投げ……しますか?」
起き抜けに。目覚めのコーヒー代わりだ。想像するとちょっと楽しそうだった。
「するかバカっ!」
勢いよく身体を起こす。
サイトに載せるもの以外にも書きたい…!と思ってだれに見せるわけでもなく二次を書いたりします。これは鋼の〜が初期のころに書いたもの。月日が流れるの……ほんと早い……(ちょっと遠い目)