年の差カプは萌え


日乱でこんな話を考えたよ。


 相手を怒らせずにうまくかわしているのだろうが、はたから見ていると仲良く談笑しているようにしか見えない。日番谷にしてみれば決して愉快ではない光景だった。
 白い羽織を脱いで死覇装だけになる。隊員でも平隊員や新入りだと他隊の隊長・副隊長の顔と名前が一致していない場合が存外あるのだ。おかげで私服で歩いてると、まるっきり子どもにしか見えない日番谷は絡まれることが多々ある。
 よし、とうなずくと、できる限り無邪気で子どもらしい笑顔をつくって廊下の角から飛び出した。
 こちらに気づいた乱菊が驚いた様子で目を見張る。が、なにかいわれる前に普段とくらべると高い声で、思いっきり、呼んだ。
「おかーさーん!」


「――……」
 こめかみに指をあてて揉むように押しながら、眉をよせて目をつぶった日番谷の副官はさきほどからずっと沈黙し続けている。
「なんだよ、まだ怒ってるのか」
「もう、頭痛い……一体、どういうつもりです、あんなこといって」
「相手の男の度量を試しただけだ」
「普通、引きますって」
 引きますよ、ええ絶対引きます実際ドン引きだったじゃないですか。
 いいつのる乱菊に憮然とした顔で、
「あれくらいで引く程度の奴がお前を口説こうなんて千年早いんだよ。それ相応の覚悟ってもんが必要だろうが」
 天才児が大真面目に眉間にしわをよせてうなずくものだから言葉がなかったと彼女は後に副隊長仲間に語ったらしい。いつから自分を口説くには覚悟が必要になったのだろう、そんなにハードルを上げた覚えはない、と。


 
日乱にすると十番隊隊長さんはなぜか大真面目に天然な子になっちゃいます。なんでだろうふしぎ…!普段は副官→ボケ・隊長→つっこみ。なのに…! 続きも考えた。


「な、なによこれ」
「松本十番隊副官」
「七緒? どうしたのよ、この……」
「いいからちょっと来て」
 腕をとられて、されるがままに引っ張られていく。七緒は大股で廊下を歩き、資料室の扉をあけると乱菊を押し込んで、後ろ手に扉を閉めた。


 じっと見つめ、
乱菊さん。あなた昨日から自分が噂になってるの、知らないの?」
「う、噂って」
「知らないのね」
 ふっとため息をついた。
「ねえ、ちょっと――」
「昨日からうちの隊員の一部も騒いでいて、正直困っている。京楽隊長はおもしろがってるけど。あのね、まずあなたに憧れているというか、支持者というか――あなたを遠くからでも見守っていたいという隊員は多いの。もちろん親しくなりたいと考えている不埒な輩もいるでしょうけど。老若男女、隊も問わず。だからこんなに大騒ぎに……」
「ちょっと。だから、原因がわからないんだけど」
「心当たりはないの?」
 七緒の問いに、あわてて首を横に振る。
 ……あ。
 もしかして。
 昨日の。
「その顔だと、思い当たる節が?」
「……あまり考えたくないんだけど」
 おそるおそる理由を尋ねれば、自分とはまた違った意味で白黒はっきりつけなくては気がすまない性格の友人は、きっぱりといってくれた。
「松本乱菊十番隊副隊長に、隠し子がいた――と」
「やっぱり……」
 思わず頭を抱えてしまう。
「しかも、十歳くらいの元気そうな男の子だった、と」
 元気そう……たしかに元気ではあるだろう。天才児の上に悪知恵も働き、書類仕事も実戦も完璧にこなす人だから。
「七緒、ごめんね……」
 彼女の隊にまで迷惑をかけたことを謝ったつもりだった。だが、眼鏡の奥の目はやさしく、そっと乱菊の落とした肩に両手を置く。
「すべてを打ち明けるだけが友人関係ではないと思う。いえないことだって当然あるでしょう。謝ったりしないで。子どもを持った経験がない私がいうのはなんだけど、あなたを尊敬する。これからも仕事との両立、がんばってね。私にできることがあったら遠慮せずにいって」
「ち、違うっ!」


日番谷隊長――?」
 説明を終えた乱菊は、七緒の言葉にうんうん、とうなずく。
「――が、あなたの隠し子だったの?」
 まさか、という表情でいわれた。
 一瞬、大まじめにいう七緒がかわいらしいと思ってしまった。
 しかし誤解は解かねば先にすすめない。


真面目キャラがぼけると楽しいという自分の嗜好だったことが発覚する。驚愕の事実です。(な、なんだってー!!