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欲しいものは、手に入らない。
だからせめて欲しがられたかった。
彼女を見たとき、はじめて、欲しい、と思った。強烈に思った。それ以外の感情はなくなってしまった。慣れたはずの駆け引きに適度な距離の詰め方、相手に追いかけさせる方法なんて、全部忘れてしまった。
100匹目の猿という俗説を思い出す。いつか読んだ小説の、ペンギンのコロニーは最初の一羽が新しい行動を決定するという寓話めいた例えを思い出す。羊の群れは最後の一頭が決める。最後尾にようやくはりついていた弱々しい劣った生き物が世界を更新する。
裏切りたくないから先に裏切ってくれればいい。そうすれば私はあなたを壊せる。あなたは私の名前が好きだといった。そういったのは二人目だ。笑ってごらん。彼女は教えてくれた。自分を守るために、世界と対峙するために。美しい海と書いた。みう、と読んだ。うつくしい海に、ふりそそぐ、いつくしむ雨。臆病者だった父は、私と半分しか血のつながらない姉との間にどうでもいい吐き気のするくだらないなのに一生逃れられない関連性を求めた。
早く裏切って。海が好きだといったあなた。青い毒の名前を教えてくれた彼女を忘れられないあなた。夜に似ている――と私の頬をなでたあなた。私は次の世界を決定する。腐敗した世界によせるイントロダクション。早く。あふれてしまうまえに。
それでもきっと、あなたが私の名前を好きだといってくれたことは、忘れない。
なんかうまく書けにゃい。
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