一瞬の衝動のために、それによって起こりうる不利益や周囲との軋轢や後始末をすべて受け入れられるほどできた人間でもないので、けれどやるだけやってあとはしらなーい、と逃げられるほど子どもでもないので、うつむいて、その姿をまぶたの裏に描いて、手に入らなかったものほど執着する、という事態にならないように、本物よりもうつくしく脳内修正されないように、もう一度見れば静かにさっきと同じ場所にいて、何もいってはくれないし、僕を見てくれるということもなかった。また視線を落としたら首の後ろがひどく熱くて、知らずため息をついていた。


欲しい、というのはこういう気持ちで、諦める、というのもこういう気持ちなのだろう。手が届く――なんて最初から思っていなかった。ガラスで区切られた向こう側できらきらと輝いて、道行く人々の目を一瞬捕え、楽しませていたから、あの場所にいるのが一番ふさわしいのだとわかっていた。ただ欲しいと焦がれただけで、どうこうしようなんて考えてなかったよというのは嘘だ。自分のそばに。毎日飽かず眺めることができる場所、触れられる場所に。そんな資格もないくせに。


恋人が手を引くから、僕はわざと早足でその場を離れた。僕にはこの手があるからいっときの焦燥も恋といってもいい感情も忘れる。




ウインドウショッピングって罠ですよね。でもお店の内装のメインであるすごく大きいシャンデリア(非売品)は現実問題として、どうしたってむりだと思うの。置く場所もないしね…!