血液の透過


※以下、リアルエログロ流血話(事件性はなし)なので苦手な方はスルー推奨お願いします。






知人、というか袖すり合った縁くらいの方なのですがはじめてお会いしたときに話してくださった思い出があります。



その方はドSでドMでぱっと見てわかるくらい変態というかいやもう本当すみませんでした、と土下座したくなるような年齢不詳の男性なのですが、以前、針をやったことがあるそうです。


もちろんこの場合の針といえば鍼灸などではなく医療針などを皮膚に刺すプレイのことで、場所もその手のバーで、何人か客とスタッフがいて、消毒器具もあって、経験者がいて、自分はやったことがなかったけれどこれなら大丈夫、と思ったから、で、


誤算だったのは多少なりともお酒を飲んでらっしゃったことで、酔って流血するとどうなるか――というと血が止まらなくなるらしいです。どばどば出るわけではないけれど、ぽた、ぽた、といつまでたっても止まらない。


それで、そこにいた当時の(プレイの)パートナーだった女の子がどうしたか。


と、いうのが問いでした。
わたしがなんと答えたかは忘れましたが、正解は至極シンプル、


「吸ってくれたんだよね。その子、血が止まるまで」


今時少しでも知識のある人間ならば他人の血液に素手で触ることすらしない、してはいけないとわかっているご時世です(オノ・ナ○メの作品にもそんな台詞がありました)。


それがどれほどリスキーな行為か。
どれほど、命を危険にさらす行動か。



その方も、当然それはわかっていて、だからこそ忘れられない思い出として語ってくださった。そしておそらくパートナーさんもわかっていたと思うのです。


はずみだったのか、ノリだったのか、本気だったのかはわかりせん。ご当人もわからないのかもしれない。



そこまでして体現するものを愛という単純な言葉で表現することがわたしにはできません。


単に冷静さを欠いた、頭の軽い人間のしたことだと一笑にすることもできましょう。


ただわたしは男性が語っている間のいとおしそうに当時を思い出す表情と、最後の言葉が忘れられません。


「そのとき思ったんだよね。ああ、こうやって遊んでるだけの仲だけど、この子は、少しは俺のこと嫌いじゃなかったっていうか、人間として見てくれてたのかなって」



……もしも、もう一度お会いすることがあったならもう一度このお話を聞きたいと思います。