『リトル・ミス・サンシャイン』


それが青春ものや感動作といわれている作品でどんなに世間一般での評価が高くても、ひとによってはとんでもなく鬱映画となりうることがある。ギルバートグレイプやダンサー・イン・ザ・ダークがその例だ。


そしてこの映画、自分にとって忘れられないほどの鬱映画となった。基本はコメディ(ブラック)ちょっとほろりとしちゃう場面もありのあたたかい映画のはずが全力で回避したいトラウマを思い出させてくれました本当にありがとうございました観賞中何度「うわぁあああ(AAry)ってなったことか…!



ストーリーはいたって単純、くりあがりで予選を通過した末の妹、オリーヴの美少女コンテスト出場のため、心はバラバラな家族が一台の車に乗って旅をするというファミリーロードムービー


しかしこの家族が病んでいる。


・祖父…軍人だった過去を持ちヘロイン中毒で老人ホームを追い出された元気なおじいちゃん。「女とファックしろ」が定番のお説教。
・父親…ビジネスでの成功を夢見て『勝利のための九段階プログラム』を売り出そうと駆け回る。仕事してるのかな?
・母親…バラバラな家族にうんざり。つかれた。もうつかれた。
・叔父さん…学者。自殺未遂をおこして妹家族に引きとられた、地位も片想いの相手も失った繊細なゲイ。
・長男…空軍のパイロットを目指して、なれるまで誰とも口をきかないと決めている。最低限の会話は筆談。ニーチェ信者。
・末妹…めがねっこ。あかぬけない。たぬきに似たおなかの持ち主。正直そんなにかわいくな(ry にもかかわらず、美少女コンテスト優勝を目指して日々ダンスの練習中。



もちろんまともな会話なんて成り立たない。そんな家族がひとつの車に乗って旅をするのだ。あのなんともいえないうんざりした空気やいらいらした雰囲気がいろいろと触れてはないらない琴線に触れたと思われる。




ラストがいい。強烈なカタルシスがあるわけじゃない。奇跡みたいにすべてが解決して、一気にこころが通じ合ったわけでもない。けれど確かに何かが変わった。家族はどうしようもなく家族だ。そしてそれは絶望であるとともに、希望なのだ。多分。